5年 鳴らそう!フィルムケース電磁ブザー③

公開日: 2018年10月28日日曜日


電磁ブザーを製作したものの,音が鳴らないという「壁」にぶつかった子どもたち。電流のつながりが悪いという考えや差し込み方に目がいっており,電磁石そのものの力に目を向けている子ばかりではありませんでした。
そこで次時では,ブザーが鳴るようにいろいろと試す時間を前半で設けた上で,電磁石を板に近づけたり遠ざけたりすると考えている電磁石の強さに目を向け始めている子の考えを取り上げ,気付きを出し合って問題設定に向かうことができるようにしました。

前時の振り返りの中で2人の子を指名しました。粘り強く取り組んでいる子を価値付けるとともに,磁石の強さに目を向けることができるように,考えを全体に広げます。

RM:金曜日,がんばって何度も音が鳴るまで挑戦したけど,今日の時間がんばって絶対に音を鳴らしたい。
MH:磁石が鉄板に近いと音が鳴りやすい。
 その後,20分ほど自由に電磁ブザーを扱う時間を設けました。その中でTMさんたちのペアが小さな音だが鳴らすことができました。
SZ:TMちゃん,どうつないでるの?
TM:うまくつながってないかなって思って,ここをくるって巻き付けたの。
SZ:すごい。確かに鳴ってる。
SG:ここ(鉄板と導線がくっつくところ)に光が出ると鳴るみたい。
SZ:近づけないと鳴らない?
TM:近づけるとなるんだよね。
MH:何が?鉄の板でしょ?そうそう。さっき言ったとおり。
KI:鳴った?ちょっと鳴らしてみて。
SG:あれ?鳴らない。導線のところがめっちゃ熱くなっている。あっ,鳴った。長い間鳴るようになってきた。
SZ:板が震えてる感じはするんだよ。ぶるぶるって言うんだよ。
MH:音ちっちゃい。乾電池の問題じゃない?
SZ:乾電池は一緒なんだから,いけるって。
MS:そもそも磁石になってる?
SZ:なってるよ。それは,なってる。でも,音が鳴らない。どうして?鳴らない。なんでなんで。
TM:なんか板と電磁石は近づいたら音が鳴る。近づいたときの方が引っ張る力が強いから震え方がよくなるんじゃないかなと思う。
SZ:なんで朝香ちゃんたちのは鳴るんだろう?めっちゃ不思議なんだけど。
SG:でも,時々鳴らなくなる。
SZさんは,音を鳴らすためには,板を震わせる必要があることに気付き,音が鳴った朝香さんのブザーと比較を始めました。TMさんとSGくんは鳴るときと鳴らない時の比較から,電磁石と板が近づき,引きつける力が強いとき,板を震わせることに気付いていました。電磁石の強さに目を向けるため,TMさんの気付きを全体で取り上げ,電磁ブザーが鳴るためには,何が関係しているのかを話し合いました。
TM :コイルを板に遠ざけると音は鳴るけど,小さくて,だけど,近づけると音は鳴るし,大きく鳴るってことがわかりました。
SR :先生,音が鳴るって,板が震えてコイルに当たって音が鳴るんですか?
T   :フィルムケースに当たってた?
TM :当たってない。当たらずに震えている。
T   :どうしてやろうねえ。
AN :引きつけてる。
SR :離れてると,磁力がそんなに届かない。たぶんなんですけど,電磁石って磁石じゃないですか?だから近いと磁力が強いからたくさん震えて大きい音が鳴ると思うんですよ。離れていると磁石の力が届きにくいから振動が少なくなるってことじゃないかな。
YTR:SRくんが離れていると磁石の力が届きにくいって言ったじゃないですか?だったら,離れているとだめってことなら,磁石の力を強くしないといけないって言ってるんですけど,その方法が今わかんないんですよ。それを改善していったら,離れていても,大きな音が鳴るんじゃないかなって思うんですよ。
AN :YTRくんのやり方はいいと思うんですけど,磁力が遠くまで届く間に薄くなっていってるんじゃないかなって思って。大砲みたいなので,最初は勢いがあるけど,だんだん勢いが落ちていくみたいに。だから,最初の力が大きければ,届く時に薄くなったとしても大きい磁力が届くことになるから,たくさんエナメル線を巻き付けたりしたらいいんじゃないかなって思う。
RK :YTRくんと同じなんですけど,板と電磁石が遠くであんまり届きにくいって言ったじゃないですか?
    だったら,その磁力を強くしたら,遠くても大きい音で鳴ると思う。
AN :たくさん巻き付けると,電気が触ってる面積が広くなるから,その分,たくさん電気が流れるんじゃないかなって。
KI  :二重にするんじゃなくって,面積が広くなるって言えばいいんじゃない。
T   :面積が広くなるってどういうことを言ってるの?
SR :1本のエナメル線の幅がこうあったら,この中を電気が流れてるでしょ。
RN  :幅っていうか,太さ?
SR :そこに流れてる分を面積と考えている。
T   :ああ,その太さと長さを合わせて面積と捉えているんだね。
KI  :え?意味分かんない。体積っぽくない?でも,そこに流れている電流の大きさが関係しているってことはわかる。
 子どもたちの考えが,導線内に流れる電流と磁力の関係に目が向いたところで,子どもたちに1本当たりの導線に発生する磁力の小ささを実感させるため,エナメル線1本に電流を流し,マグチップや砂鉄を付ける演示実験を行いました。その際,電源装置の使い方を合わせて指導しました。
 釘をつけてみてもつり上げられない事象を見せたとき,ANくんは次のように話し出します。
AN :それは,乾電池1個分でエナメル線1本分の磁力しかないから,それを巻き付け
   たら磁力が強くなる。
    1本が弱くても何回も巻けばいい。
T   :1本分が弱いって言いたいんだ。じゃあ,つけるものをもうちょっと小さくしてみて,マグチップをつけるよ。(少しつく)
KT :先生,砂鉄はないんですか?もっと小さいものならもっとつくんじゃないかなって。
T      :じゃあ,砂鉄もやってみようか。(導線にまとわりつくようにつく)
C   :おお!つくじゃん!
C   :でも1本だと弱い。
 1本の導線に電流を流してみて,小さな磁力が導線のまわりに発生することを確認して本時を終えました。子どもたちは,話し合いの中で強さを強くすれば音が鳴りやすくなることに気付き,強くするための条件を考え始めました。その際,1本の導線内に流れる電流と磁力の関係に目を向けた子の考えから,1本の導線に流れる弱い磁力の存在を確かめました。次時は,導線1本に発生する弱い磁力を考えの根拠として,電磁石を強くしていくための仮説をそれぞれに立てていくところから始めていきます。

理科部 松山 明道
matsuyama-a@educ.kumamoto-u.ac.jp
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