自然の中の水

公開日: 2020年6月26日金曜日

前回見えないものを見える化するという記事を書きました。5年生では,4年生のときのやり残しだった「自然の中の水」を学習しました。

 雨の後,運動場にできた水たまりがいつの間にかなくなっています。地面にしみこんだものもいくらかはありますが,日なたと日かげで水たまりの乾き方が違うことから空気中に蒸発したことが考えられます。そこで,2つのビーカーを準備して,共に100mlの水を入れ,水面のところにラベルとなるシールを貼った後,一方にラップをしてベランダで観察をすることにしました。1日後,2つのビーカーを比較してみると,ラップをしていない方のビーカーの水位は下がっています。ラップをしている方は,ラップに水滴がついていて,水位は少し下がっていました。さらに,よく見ている子はある発見をします。ラップをしている方のビーカーの壁にくもっているところがある。テレビにつないだカメラで拡大し,みんなでよく見てみると,確かに白くくもっていて,手で触ると水がつきます。素晴らしい観察眼です。

 この事実からビーカーの周りでどんなことが起きているのか推論していくことにします。まさに見えないものを見える化していくのです。3クラスがそれぞれの考えで深い思考を重ねていきました。いろんな友だちの意見を聞けるっていいですね。

 共通していたのは,ラップについた水滴はどうやってできたのか?です。ある子は「水蒸気になって空気中に飛び出したけれど,ラップにあたって外に出られず,ラップで水蒸気同士がぶつかり水にもう一度戻った」と図を使って説明します。その際,もう一人の子が「例えば,水というのは,水蒸気の粒が手と手をつなぎ合っている状態で目に見えるようになっている。そして,蒸発の際にはその手を離してバラバラになって見えなくなるのだけれど,ラップにぶつかると再び手と手をつないで水に戻る」ことを付け加えました。見えないものをモデル化して考えている姿です。また,見えないものを実体的にとらえて考えている姿とも言えます。粒子の概念で自然を見つめていく深い学びです。そうだそうだとみんなの同意を得られそうになったところで,私は次のように投げかけます。「だったら,空気中には水蒸気がたくさんあるのだから,それらがぶつかって水になるのだとしたら,黒板や壁,床はいつも水浸しってことになるんじゃないの?」すると,別の子は温度と関係づけて次のような発言を既習事項から語ります。「コップに氷を入れた水などがお店などで出されると,外側に水滴がつくよね。水滴って温度が冷えた時に水蒸気が冷やされてできるんじゃない?」そこで,ビーカーに氷水を入れてラップをかけ,ビーカーの外側に水滴があらわれる様子を実験で確かめました。ラップにつくということは,ラップが冷えていから水滴になるとも考えられるのです。しかし,別の子は付け加えます。「それもわかるけど,日光にあてていたわけで,ラップの温度も上がっていたはずだから,その説明では納得できないなあ。」ごもっともな意見です。「夜になって気温が下がってから水滴ができてのではないか?」気温の変化と関係づけて考察を深める意見もその後,飛び出しました。子どもたちが今見た事実からは,これ以上のことは結論づけることはできません。でも,理科とはそういうもので,1つの実験であらゆることが結論づけられるわけではないのです。ここまでは言えるけど,ここからは言えない。その境界を見つけることが事実から考察することだと思います。それぞれの意見を聞きながら,水の変化を考えていった子どもたちの姿が素晴らしかったです。

 6月28日(日)16:10~全国規模で行われるオンライン授業展「第3回これからのみんなの授業展」で公開授業を行うことになりました。ZOOMやYoutubeからどなたでも無料で参加できます。時間があれば,自宅からでも参加してみてください。私の授業以外にもたくさん授業が公開されますので,そちらに参加していただいても構いません。私は「身近な自然の観察から広がる理科のミカタ」と題して授業します。詳しくは,https://korekaranojugyo3.peatix.com/ 「これからのみんなの授業展」で検索してみてください。

理科部 松山 明道 matsuyama-a@educ.kumamoto-u.ac.jp

写真は記事と全く関係ないのですが,3年生が花壇に花を植える際,大きな草を「おおきなかぶ」の絵本に出てくるように協力して抜いていたところです。この時期の植物のたくましさを感じる1枚です。
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